【JAZZシンガー必読】ジャズ歌手の発声問題について考えませんか?
こんにちは、music-villageボイストレーナーの青山里保です。
皆さん、未経験から音楽を始めるなら何の楽器をやりたいですか?
少しずつ上達するのでいいなら、ギターやピアノも選ぶかもしれませんが、1週間後にライブをしないといけないとなると、大半のひとは歌を選ぶのではないでしょうか?
そうなんです。じつは、歌は始めるだけなら、とっても簡単な楽器なんですよね。
他の楽器は、どうやって音を出すのか、どうやって音階を鳴らすのかから勉強しないといけないけど、声って普通に出ちゃうます。しかも、カラオケ文化もありますし、歌うことってそこまでハードルが高くありません。ハードルがあるとしたら恥ずかしいとか、たいした理由ではない事が多いです。
でもそこから、どうやって音楽的に素晴らしい歌手になるのか
それが、大変なところです。
それには、音楽的知識や芸術的知識や言語的知識がないといけなかったり。
と、まあ、なぜこんな話をしているかというと、
《ジャズシンガーの発声について》について話したいからです。
JAZZシンガー「敷居は高いが、はじめやすい」
ジャズってなんだか敷居が高くて、とっつきにくいので、若者にはあまりうけなかったりします。でも、ちょっと大人になっていくと、あの落ち着いた雰囲気のスタンダードに興味が出てきて「はじめてみような。。」と思う人も多いです。
敷居が高めなだけあってルールが多かったり、歴史があるぶん幅広い知識を求められる事も多く、アドリブ・インプロビゼーションばりばりの世界だし。「実は敷居は高くないよ!ジャズって楽しいものなんだよ!!」と活動している方も多い中、世間の印象からいまだに「敷居が高い」を拭い取れてはいないと思います。
でも、私はね。
歌に関して言えば、ハードルはめちゃくちゃ低いと思うんです。
❶曲がたくさんあるので、音域も選び放題
❷自分のキーに変えられる
❸リードシートという簡単な譜面でOK
❹いろんなキーの譜面がこの世に出回っていて、楽に譜面を作れる
❺同じ曲のいろんな音源で勉強できる
など、英語アレルギーがないなら、とりあえずはじめやすいのオンパレードだと思うんですよ。
ボイストレーニング的な観点からいくと、今時のJpopとかを始めるよりも、ジャズを始める方が簡単だと思います。ぐっと音域を狭められるから。
ジャズスタンダードは、だいたい1コーラス32小節ほどなものが多くて覚えやすいし、テーマさえ歌えればセッションにも行ける。それが5曲でもあれば、ちょっとしたライブに出れる。そしたら、あとは、曲数を増やして、ワンマンなりジャズフェスなり、いろいろ参加する機会はあるので、歌手として活動できたという達成感にもなります。
・若い頃は、バンドをやっていたけど、ある程度大人になってジャズを始める。
・結婚して子供も親の手を離れるようになり、趣味を探してジャズシンガーになった。
・クラシック・ポップスをやっていたが、ジャズに転向した。
こんなひとも多い印象です。
JAZZシンガーの罠「喋るように歌うくらいがいい」
JAZZのボーカリストだけとっつきやすいという現状は、味のある声が優先される風潮にあると思います。別に、突出した歌唱力が求められているわけではなく、少し歳を重ねた渋さがウケる、人間味が出ている歌がウケる。若い頃に艶々の声で歌っていたサラヴォーンが年月を経て男性ばりの渋い声になってる。それも、またジャズの楽しみ方のひとつだと思います。
特に、ジャズは歌い上げるというより、STORY TELLER(ストーリーテラー)である事の方が重要視させていて、私もそれに関しては賛成です。物語の語り部であることが大切だと思っています。
ですが、トレーニングを全くしなくていいかというと、話は変わってきます。
ここで、皆さんに質問ですが、
ジャズのレッスンだけではなく、発声・ボイストレーニングはしていますか?
歌で使う音域よりもはるかに広い音域を練習する必要があるのをご存じですか?
自分にとってぴったりな曲ばかりやっていた私の末路…
ジャズだと、自分のキーに合わせられちゃうから
自分の素敵な声の音域で歌う→苦手なところを練習しない
自分流のメロディ作ればカッコいい→発声的に弱いところごまかせる
レッスンは英語とジャズのリズムについてだけ、ボイトレは無し→声が枯渇していく一方
私が昔、超絶のひっくり返り女(フリップする人)だったことは、先日ブログで書きましたが、本当にこれが原因だったんだろうなって思う時が多々あります。
決まった音域までしか練習しないと、本当に声って出なくなるんです。
いまは、トレーニングの甲斐あって、声のコントロールがしやすくなりましたし、疲れることも少なくなり、褒められる機会も増えたりと良いことずくしです。
以前の私に、教えてあげたい…!!!!!
JAZZシンガーたちよ、これやりませんか?
ということで、正しく練習をしていかないと、自分の悪癖を育てるようなラインナップで、歌のレパートリーを増やすことになってしまうんです。
実際に、ライブでは使わないかもしれない。
実際に、この練習曲は人前で歌わないかもしれない。
実際にやらないことを練習するのには、意味がない。
しかし、そうでは無いのです。
実は、幅広い練習をした方が声に必要な筋肉を育てることになる
実は、ビブラートもかけ易くなる
実は、コントロールがしやすく表現力が上がる
ボイストレーニングってやってみたら本当にいいことしかないのに、「ジャズを勉強してます」という人は「ジャズ」しか練習しないのが、私はとても残念なんです。
だって、トランペットの人だって、「ジャズ」を勉強しながら奏法を学ぶと思うんです。でも、歌は、さくっと出てしまうので、「まあ、後でいいや」「出ているから問題ないでしょ」と後周りになることが多い。
でも、実際は、活躍しているジャズシンガーの方は、ちゃんとボイストレーニングを定期的にしているしケアもしっかりしている。
そこの違いに気がつくこと、そして1歩踏み出すこと。
そうすると、だんだんと自分の声が変わり、周りの反応も変わってきます。